小中規模事業者にはインストール型/クラウド型の会計ソフトが適している

会計ソフトは、経理業務の効率を大幅にUPさせることのできる便利なツール。
一口に会計ソフトといっても、オンプレミス型(サーバーインストール型)、インストール型、クラウド型の形態があり、個人事業レベルの事業者に適した製品、大企業に適した製品が存在します。
従業員数が数千人レベルになってくると、さすがに市販の会計ソフトや業務ソフトでは追いつかず、SAPやオラクル等のERP製品を自社用にカスタマイズして導入する形になってくるでしょう。(ERPは従来は自社でサーバーを保有しインストールして利用するオンプレミス型が主流でしたが、現在はSaaS型(クラウド型)が主流になってきています)
ですが、そういった専用システムは大きなコストがかかりますし、大企業自体ほんの一握りの存在です。
数多くの小中規模事業者は、自社専用の会計システムを導入するといった選択は資金的に難しいのが現実でしょう。
そういった小中規模事業者におすすめなのが、インストール型及びクラウド型の会計ソフト。
インストール型及びクラウド型の会計ソフトの比較表
インストール型 | クラウド型 | |
---|---|---|
インストールの有無 | 必要。PCにソフトをインストールすることで利用可能 | 不要。インターネット環境があればどこでも利用可能(オフライン環境では利用不可) |
対応OS | Windowsのみ対応のソフトがほとんど | WindowsでもMacでも対応 |
対応デバイス | PC | PC、スマートフォン、タブレット |
初期費用 | 必要 | ほぼ不要 |
利用料金 | 購入時にまとまった金額が必要 | 月額1,000円程度から利用可能 |
自動仕訳機能 | 対応ソフトがやや少ない | 対応ソフトが多い |
ソフトのレスポンス速度 | 早い | やや遅い |
複数拠点での運用 | 一部可能 | 可能 |
連携サービス数 | 少ない | 多い |
バージョンアップ | アップデート版を購入する必要がある | 無料で自動アップデート |
インストール型の会計ソフトの特徴

インストール型の会計ソフトは、PCにソフトウェアをインストールすることによって利用します。
インターネット環境などの外部要因に左右されないので、システムの安定性の高さ、レスポンスの速さが特徴。
導入コストは個人事業主用の青色申告ソフトであれば10,000円前後。高額な価格設定の会計ソフトもありますが、資本金1億円以下の法人で従業人が数十人程度であれば、100,000円以下の製品で対応できるでしょう。
その他にかかるコストとしては、法令改正等のバージョンアップの際には、最新バージョンへの更新料金が別途発生します。(※保守サービスに加入している場合はバージョンアップが無料なケースが多いです)
PCにインストールするタイプのパッケージ型製品では現在、弥生株式会社が提供している財務会計ソフト『弥生シリーズ』がトップシェアであり、名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
株式会社BCN調べの業務ソフト部門実売統計でも、25年連続1位という実績があります。
【弥生会計スタンダードの管理画面】

弥生シリーズをはじめとする小中規模事業者向けの会計ソフトはユーザビリティに優れている製品が多く、ある程度経理の知識がある人であれば日々の取引の仕訳処理を行っていくだけで、自動的に決算書をはじめとする各種帳簿が作成できてしまいます。
これまで手書きやEXCELで帳簿を付けてきた事業者にとっては経理業務の効率化という大きなメリットがあるので、インストール型の会計ソフトは長年多くの小中規模事業者に利用され続けていました。
ですが、ここ10年でクラウド型の会計ソフトが台頭し始め、2025年現在でも順当にシェアを伸ばし続けているという現状があります。
クラウド型の会計ソフトの特徴

クラウド型の会計ソフトは、インストール不要でインターネット上で全ての経理作業を行うことが可能な点が特徴。
場所を問わず利用できる利便性の高さと、金融機関データ等の自動取得&自動仕訳機能によって、経理業務を大きく効率化させてくれる機能が豊富な点が特徴。
簿記知識不要のかんたん取引入力、金融機関データの自動取得からの自動仕訳、Macでも使える、自動バックアップ/バージョンアップ等、機能の利便性と先進性から一気に利用ユーザーを増加させてきました。
初期費用が不要で、個人ならば月々1,000円~2,000円前後から、法人ならば月々2,000~3,000円前後から、といった月額課金制の料金プランなので導入のハードルが低かったという点も要因の一つでしょう。
スマートフォンやタブレットから操作可能な点やモバイルカード決済サービス、POSレジアプリ等の他社サービスとの連携機能が充実しているので、機能の拡張性の高さも特徴です。
参考:クラウド会計ソフトとは?
【やよいの青色申告オンラインの取引入力画面】

【マネーフォワードクラウド確定申告の金融機関との連携画面】

【freeeのスマートフォン向けアプリの取引入力画面】

クラウド会計ソフトを提供する代表的な事業者としてはfreee、マネーフォワードクラウド会計、弥生の3社が挙げられるでしょう。
freeeとマネーフォワードクラウドがほぼ同時期にサービスを開始しており、その後インストール型大手である弥生もクラウド型に参入し、現在はこの3社がしのぎを削っている状況と言えます。
『弥生オンライン系』『マネーフォワードクラウド』『freee』の機能比較表
弥生オンライン系 | マネーフォワードクラウド | freee | |
---|---|---|---|
利用料金 | 【個人向け】 0円/月~ 【法人向け】 38,280円/年~ | 【個人向け】 1,408円/月~ 【法人向け】 4,378円/月~ | 【個人向け】 1,958円/月~ 【法人向け】 4,378円/月~ |
無料体験版 | あり(60日間) | あり(30日間) | あり |
サポート | 電話、メール、チャット、リモート操作、経理に関する業務相談 | 電話、メール、チャット、訪問 | 電話、メール、チャット |
自動仕訳機能 | あり | あり | あり |
スマホアプリ | あり(iOS/Android) | あり(iOS/Android) | あり(iOS/Android) |
ID数 | 1つ | 3つ | 3つ |
部門別管理 | なし | あり(2階層) | あり(2階層) |
電子申告 | あり(※スマホアプリからは不可) | あり(※スマホアプリからも可) | あり(※スマホアプリからも可) |
権限管理 | あり | あり | あり |
消費税申告 | あり | あり | あり |
税務申告(法人) | なし | なし | あり(※法人税申告freeeにて対応) |
上場企業向けプラン | なし | あり | あり |
対応OS | Windows/Mac | Windows/Mac | Windows/Mac |
その他 | クラウド型は初年度0円で利用可能なキャンペーン中。白色申告は永年無料。 | 会計ソフトだけでなく、請求、給与、経費精算等の複数ソフトが利用可能なプラン設計。 | スマホアプリのみで仕訳入力~個人事業主の確定申告まで完結可能。 |
>>弥生シリーズの詳細はコチラ | >>マネーフォワードクラウドの詳細はコチラ | >>freeeの詳細はコチラ |
MM総研調べの2024年3月末時点での個人事業主を対象にした調査データによると、シェア1位は弥生(53.6%)。その後にfreee(24.9%)、マネーフォワードクラウド(15.2%)が続いています。
後発にもかかわらず、シェアトップを奪還した弥生はやはり長年築き上げた知名度の大きさや会計事務所との堅固なネットワークが強みになっているのかと。
ともあれスイッチングコストが高い会計ソフト業界において、これほどの短期間で導入事業者を増やしたクラウド会計ソフトにはそれだけ潜在需要があったということでしょうね。
会計事務所寄りでなく、事業者(エンドユーザー)寄りのマーケティングを展開していた点も戦略的に優れていたと思います。
近年のクラウド会計ソフトの動向
クラウド会計ソフトが出始めた当初は個人事業主のユーザーがメインだった印象でしたが、クラウド会計ソフト自体の機能の向上と数年の運用実績による信頼性UPからか、現在では法人が導入するケースも増えてきており、上場企業やIPO準備中の企業を対象にした専用プランも登場してきています。
また、会計ソフトだけではなく給与計算、請求書作成、経費精算、マイナンバー管理ソフトの機能を一括で提供するオールインパッケージのプランにも注力している印象です。
最近では会計ソフトのデータから与信を行い、複雑な審査の手間いらずでオンライン融資が可能なサービスも各社展開してきています。
ここ数年は各社利用料金の値上げを段階的に行われていますが、機能の改善追加は常に行われているので、妥当な範囲の値上げかと。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)、電子帳簿保存法への対応を機に会計ソフトの新規導入、既存ソフトからの乗り換え需要が増加しているので、クラウド型会計ソフトへの注目はさらに高まってくることでしょう。
経理初心者向けの補助機能が充実
インストール型の会計ソフトもクラウド型の会計ソフトも、近年経理初心者向けの補助機能が拡充されています。
簿記の知識がなくても仕訳が作成可能な機能や、感覚的に操作可能なインターフェイスが搭載されているので、経理のプロフェッショナルでなくても運用可能です。
以下、実際にどの会計ソフトを選べばよいのか、会計ソフトを選ぶ際のポイントについて解説していきます。
自社に必要な機能が搭載されているか
会計ソフトを選ぶにあたって、自社に必要な機能が搭載されているかどうかは最も大切なポイントです。
個人事業主であれば消費税の申告機能、法人であれば部門別管理機能の有無などは、経理の運用に大きく影響してきます。
また、会計ソフトには複数の製品グレードや料金プランが設定されています。
どの製品グレードや料金プランを選ぶかによって使える機能が異なってくるので、捻出可能なコストの条件を満たした上で必要な機能が提供されているかどうか、事前にしっかりと確かめましょう。
自社に必要な機能が明確でない場合は、プラン変更するだけで使える機能を柔軟に選択可能なクラウド型の会計ソフトを選ぶのがよいでしょう。
経理担当者の経験・スキルに適しているか
実際に会計ソフトを運用していくのは経理担当者です。その経理担当者がどういった経験やスキルをもっているかで、会計ソフトの選び方はかわってきます。
経理業務の経験が豊富な人であれば、プロフェッショナル向けの機能が充実している会計ソフトがよいでしょう。
経理業務の経験があまりない人、社長が自分で経理までこなすケースであれば、簿記の知識がなくても仕訳登録ができる機能等が充実したソフトがよいでしょう。
また、会計ソフトは長い期間使い続けていくものですので、インターフェイスの見た目や操作感がしっくりくる等の要素も大切です。
社内のPC等のハードウェアに適しているか
会計ソフトは基本的にはPCにて運用します。社内でどういった種類のPCを利用しているかでも、会計ソフトの選び方はかわってきます。
インストール型の会計ソフトは、基本的にWindows OSのみの対応です。
社内のPCがMac OSであれば、Mac OS専用に開発された会計ソフトを利用するか、クラウド型の会計ソフトを利用するという選択になるでしょう。
社員にスマートフォンを貸与しているのであれば、外出先から経理申請できる等の機能が搭載されたスマートフォン用アプリを提供しているサービスがおすすめです。
無料お試し期間のあるソフトを選ぼう
会計ソフトを導入する際は経理の環境を整えるために、様々な手間と時間がかかります。
ようやく経理環境が整ったと思ったら自社に必要な機能が搭載されていなかった・・・なんてことが起こらないためにも、導入する前に自社に合ったソフトなのかをしっかりと確かめる必要があります。
事前に仕様を確認するためには、実際にソフトを使ってみるのが一番ですので、無料お試し期間が用意されている会計ソフトを選ぶのがよいでしょう。
サポートはチャット対応があるものがおすすめ
会計ソフトを運用していくにあたって、サポート体制は重要です。
確定申告の締め切り間際で意味不明のエラーが頻発、1年近くずっと間違った使い方をしていて修正に膨大な手間が発生、そういったリスクを避けるためにも、わからないことがあったら気軽に相談できるようなサポート体制がある会計ソフトを選ぶのがよいでしょう。
メールは返信までにやや時間がかかりますし、電話サポートは上位プランのみ提供というケースが多いので、チャットサポートを提供している会計ソフトがおすすめです。
これから導入するならばクラウド型の会計ソフトがおすすめ

インストール型のソフトも安定性等の面でメリットも多いのですが、小中規模事業者が今から新規に導入するならば、クラウド型の会計ソフトをおすすめします。
クラウド会計の代表的なサービスである『やよいオンライン系』『freee』『マネーフォワードクラウド会計/確定申告』のいずれかを選んでおけば間違いないでしょう。
3社とも資本のしっかりした会社ですし、機能拡充やアップデートが常に行われています。
上記の3サービス以外にも多くのクラウド会計ソフトが提供されているので、当サイトの主要クラウド会計ソフトの比較まとめ記事や各ソフトの個別記事等を参考にしてみてください。
多くのサービスで無料お試し期間が設定されているので、いくつか候補をピックアップし、実際にサービスの使い勝手を体感してから運用をスタートするのがよいでしょう。